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「坂雲」解説番外編~第0次世界大戦の衝撃~


昨日、NHKでこんな番組が放送されていました。

NHKスペシャル プロジェクトJAPAN
《坂の上の雲》の時代 第0次世界大戦~日露戦争・渦巻いた列強の思惑





『第0次世界大戦』


ものものしいタイトルが付いています。
こんな言葉が存在すること自体、知りませんでした。

が…番組を見て、その意味が分かりました。
これは、日露戦争を世界史の上で定義付ける言葉として使われたものだったのですね。
日露戦争は日本とロシアの1対1の戦争で、世界大戦ではありません。
表面をみればそうですが、実はその裏では、世界の列強の熾烈な外交争いがあった。
そしてそれが、第1次世界大戦、第2次世界大戦へとつながってゆく歴史の流れを考えたときに、日露戦争をこのように定義付けるのは決して間違っていない。

そう番組では訴えています。


番組では、日露戦争までの日本・ロシア・イギリス・ドイツ・フランス・アメリカなど列強の思惑がどのように絡み合い、そして最終的になぜ戦争に至ったか、検証しています。
ほぼ、以前に自分のブログで書いた臥薪嘗胆(日露戦争前夜)の内容ですが、ここに書ききれていない詳細な内容が分かりやすく説明されています。
今回は、それを記事にしたものです。


________________________________________________________

シベリア鉄道

広大なロシア帝国の東西を鉄道で結び、国家として有機的に機能させようという壮大な計画です。
計画の指導者は、時の大蔵大臣・ウィッテ。
ロシア内にあって目先の利益にとらわれず、長期的な視野に立った国家のプランニングができる数少ない人物です。
のちに皇帝に取り入ろうとするやからどもによって失脚させられますが、彼がロシアの権力を握り続けていたならば、世界史はどう変わっていたか、分かりません。


シベリア鉄道


10年以上の歳月をかけ、ロシアはシベリア鉄道を東へ東へと伸ばしてゆきます。


シベリア鉄道が日本に与えたインパクトは非常に大きかった。
この鉄道が完成することにより、東アジアにロシアが影響力を強く持つことになるのは明らか。
片田舎であった極東に、ロシア帝国の血流が通うようになる。
ロシアの大軍を即時に東に運べ、同時に食料・物資の補給も容易になる。

ロシアは領土拡大と不凍港の獲得が悲願だったのですが、ヨーロッパ方面は列強がうずまき、この頃にはもはや大きな領土拡大は不可能に違い状態だったのです。
一方、東アジアは(日本も含め)弱小国がたむろしており、より少ない労力で大きな利益を得られる。
必然、ロシアは東にその目を向けることになります。

そもそも「ウラジオストク」=「東を征服せよ」という意味。
日本が一番恐れたこと。それは、ロシアの南下政策が本格化することだったのです。
実際、ロシアは満州に手を伸ばし始め、その恐れはリアリティを帯びてきます。




東清鉄道と南満州支線


シベリア鉄道に続き、満州に東清鉄道、遼東半島に南満州支線を敷く計画を立てるロシア。
満州全体の実効支配に向け、着々と準備を進めてゆきます。

日本が最も恐れたこと。
それは、ロシアが朝鮮をも併合してしまうことでした。
それは、日本にとって、ロシアの脅威が日本海を隔てたすぐそばまで迫ることを意味します。

日本は、選択を迫られます。
あくまで交渉によって領土問題を解決するか、戦争によって解決するか。

戦争をするなら、、先手必勝しか道はない。
鉄道が全線開通してヨーロッパ方面軍を総動員されたら、勝機はゼロに等しい。
シベリア鉄道が半開通の今なら、東アジア方面軍だけを相手にしていればいい。

迷う日本に対し、列強の陰謀が渦巻きます。




日本を日露戦争に向かわせた要因として、同盟を結んだイギリスの存在はいろんな本にも載っていますが、この番組で注目したのは、アメリカの存在です。

19世紀末にイギリスを抜いて世界一の工業大国に成長したアメリカ。
そのアメリカが目をつけたのも、清でした。
特に、いまだイギリスなどヨーロッパ勢の経済的侵略の及んでいない最後の未開の地・満州をターゲットと定めたため、その満州を実効支配しているロシアと必然的に対立することになります。
つまりアメリカは、満州を自国の市場にするため、日本の力を利用して、満州からロシアを追いだそうと画策するのです。


アメリカの魂胆


上の風刺画はおもしろい。
馬に乗った日本の明治天皇を崖っぷちに追い詰めているのは、イギリスとアメリカです。
この2国によって、日本は、戦争以外の選択肢を失ってゆき、ついにロシアと一戦交えるところまで追い詰められてゆくのです。



他にも、さまざまな国の思惑がありました。
ヨーロッパにおいてロシアと国境を接するドイツは、ロシアの兵力をアジア方面に避けたいがために、日英独の三国同盟を模索します。
ドイツと国境を接するフランスは、イギリスやドイツへの対抗心から、ロシアと手を組もうとする。

そういった、列強の代理戦争がいわば「日露戦争」の真実である。
そう番組は訴えています。
そしてこの日露戦争の戦後処理の行方が、第1次世界大戦、第2次世界大戦(日本においては太平洋戦争)につながったという締めくくりは、歴史を横断的に理解する上で非常に参考になりました。

素晴らしい番組だったと思います。


________________________________________________________

ここからは、僕個人の意見で、番組の内容を離れますのであしからず。


ひとつ気になったのが、このような有益な番組の放送時期を、なぜわざわざ『坂の上の雲』のドラマ終了後に持ってきたのか。
ただでさえ歴史捏造、自虐史観と批判の多いドラマに、この番組が追い打ちをかけ、批判に輪をかけてしまうことを恐れたからか。
それならば、非常に残念なことだと思います。


歴史は多くの人々の意思決定の集合体なので、事象はひとつでも、見方(立場)によってまったく異なった印象になることはよくあることです。
たとえば、原作『坂の上の雲』はその作風のため、あくまで日本中心に描かれ、世界から見た日本像も極力良い部分だけを切り取って書いています。悪く言えば、都合の悪いことは切り捨てている。
必要以上に美化されているのです。
この作品は、高度経済成長期に書かれたからそれはそれでいいんですよ。
人々の経済成長と、明治初期の時代とを、坂の上を登っていく気風として重ね合わせたわけです。


でも現代は違う。
もはやそういう時代ではない。
日本は坂の上の頂上を通り越して、下り坂にさしかかっている。
「下り坂」という表現が悪ければ、成長期を過ぎて、国家としての成熟期に入っている。
これから大切なのは、その下り坂をいかに安全に降りるか、ということ。

こういう時代こそ、過去の日本の良い部分だけでなく悪い部分も冷静に見つけ直すことが必要。
この番組のように、日露開戦の決定に日本が主体的に関わった面だけでなく、列強に翻弄され、引きずり回された事実もよく見なければならない。



そして、もうひとつ、最近のニュースを見て強く思うことがあります。

日本人ひとりひとりが、
「もはや勝ち負けの時代でなく、協調の時代に入った」
ことを認識すべきではないでしょうか?
そして、
「日本が率先して、相互理解と協調の世界を作り上げてゆくべき」
だと思います。



普天間基地の問題でも、アメリカの主張に負けたのなんのと言う前に、普天間も含めた日本の米軍基地の役割そのものをアメリカと冷静に話し合うことが必要だと思う。
アメリカがそこまでして基地を沖縄に置きたい理由をちゃんと理解した上で、その軍事的役割(抑止力としての役割など)と、基地があることによる沖縄県民の苦痛の両方を交渉のテーブルに載せ、お互いがお互いを理解した上で将来の基地の在り方を真剣に、前向きに検討してほしい。
「基地を県外に追放させたら勝ち、県内なら負け」とかのレベルではない。


尖閣諸島の問題でも、流出ビデオを何千回も流して中国漁船が故意に当てたのなんだのと騒ぎ立てる前に、なぜ中国がそこまであの島々の領有にこだわるのか、理解することも大事だと思う。
日本が尖閣諸島の領有を宣言したのは、ちょうど日清戦争と日露戦争の間で、義和団事件なんかで中国(清)が国外に目を向ける余裕なんてなかった時代。そんな時に日本は、誰も領有していない尖閣諸島に日本の国旗を立て、領有を宣言した。
もちろん国際的には合法だし中国の非難は的外れだけど、「お前らは、オレたちが何もできない時に、何の相談もなく先に横取りしただけだろ」と主張する中国の立場も理解できなくもない。
そういう歴史的背景を中立に伝えた報道は、ほとんどなかったように思う。
日中関係の悪化は、マスコミの無責任な報道の責任ですよ。

お互いの民族をけなし合って関係を悪化させても、何もいいことないでしょ?
領有の問題、その資源の問題、冷静に2国間で話し合って、何も日本が独り占めしなくても、利益を分配しても僕はいいと思います。お互いに牽制し合って資源開発ができない今の状況よりも、協力して資源を分け合ったほうが、よっぽど日本のためになるんじゃないか?




最後に、NHKさんにお願いです。
こういった番組が、もっと放送されますように。
そして願わくば、ドラマとオンタイムで放送され、もっと多くの人の注目を集めますように。





(主な参考資料)
プロジェクトJAPAN《坂の上の雲》の時代 第0次世界大戦~日露戦争・渦巻いた列強の思惑
(今のところ再放送の情報はありません)



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「坂の上の雲」 第9話「広瀬、死す」感想


広瀬の勇姿、しかと目に焼き付けた




まず、最初に感じたこと。
戦闘シーンが…度肝を抜かれました。


閉塞作戦1


地中海の島国マルタ共和国にある映画用プールを使っての撮影、リアルそのものでした。
しかも、細部は映像効果をより出すため、東宝のスタジオでも撮影されたそうです。
ここまでこだわった制作は、近年なかったのではないでしょうか。
そこいらの映画より完成度はずっとずっと高い。
最近ツマラナイ映画を見てしまったので、より強くそう思うリラックマ29「…汗」


そうなんですね。
『坂の上の雲』はドラマでなく、13部作の壮大な映画なんです。
この迫力をスクリーンで見たら、どんなだろ?
映画館で見たかったなぁ…!!リラックマ3「うん。」





広瀬と真之


真之に「自分しかない役割」を話す広瀬。
閉塞作戦が成功したあとで、旅順に行き、その顔を生かして旅順艦隊に降伏を勧めるというものでした。
「自分が知っているロシアの友人が死んでゆくのは、忍びない」
「広瀬さんらしいな」
という会話は、さわやかでもあり、一方で彼がこの作戦で死んでゆくのを知っているが故に切ないものがあります。
原作にはない、オリジナルのエピソードです。




そして…いよいよ閉塞作戦が実行されます。


広瀬の勇姿


広瀬の最後の勇姿。
しかと目に焼き付けました。

「杉野兵曹は、水雷が命中したときに船外に飛ばされたに違いない」
と言う部下に対し、
「推測でモノを言うなぁ!」
と必死で探しにゆく広瀬。
彼の勇猛さの裏にある、部下を想いやる優しさがにじみ出ていて、じんときました。

探しても探しても杉野は見つからず、ボートに乗り、涙ながらに起爆装置のスイッチを押す姿も印象的でした。
「杉野、許せ…!」
本当に部下想いの人物なのですね。



脱出する広瀬。
その時、砲弾のひとつがボートを飛びぬけ、広瀬のカラダを紙くずを拾うかのように持ってゆきます。


このシーン、原作では非常に淡々と書かれています。
そもそも戦場での死を描くことは非常にムズカシイと思います。
砲弾が飛び交う中で「Stand Alone」を流しても場違いなだけですし。。。

携帯していた写真入れが海中に落ちてゆくシーンは、すごく切なかった。


アリアズナの時計


アリナズナが本当にかわいそうだ。
広瀬もかわいそう。本人はもちろん戦争で死ぬことに悔いはないだろうけど、残されたアリアズナの哀しみや、彼女と二度と会えない自分自身のことを思うとき、やはり無念さはあったのではないか。
そしてその無念さが、自分の死後投函されるであろう手紙を書かせる行為を後押ししたような気がします。

そして、ボリス。
出てきた当初は広瀬につっかかって投げられたりとか、トンデモない脇役だと思いましたが、アリアズナと広瀬のことを認めたあたりから、見直しました。
あの、報告丸につけたメッセージ。
戦場であり軍人であるということで涙は見せず、「さよならタケオ」とひとりごとのようにつぶやいた最後のシーンが印象的でした。




広瀬の死に泣く真之


無二の戦友の死に泣く真之。
「Stand Alone」が流れると、泣かせにかかっていると分かってても感情が込み上げてくるんですよね。
あの音楽は反則ですよ。

顔を洗ったのは、涙を隠すためか、それとも、冷静になって作戦家としての立場を取り戻すためか、どっちなんでしょうか。
どちらにせよ、美しい男の友情ですね。




さて、第2部が終わってしまいました。
来年はいよいよ最終章ですが、今回の旅順閉塞作戦のようなスケールと迫力で日露戦争の全貌が描かれるとなると、そうとう仰天の出来栄えになるでしょうね。

…来年も期待しましょう!!それまで、さらば『坂の上の雲』!






(主な参考資料)
坂の上の雲〈3〉 (文春文庫)



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「坂雲」第8話解説~臥薪嘗胆~


日清戦争から日露戦争までの流れを追ってゆきたいと思います。



日清戦争は、いわば朝鮮の利権を争う日本と清との戦争。
それを遠くから眺める不気味な帝国がありました。


ビゴー風刺画(日清戦争)400


歴史の教科書で、上の絵を見た記憶が残っている人も多いのではないでしょうか。
ビゴーの書いた有名な風刺画です。
日本人と清国人が争って釣ろうとしている魚は、朝鮮ということになっています。
しかしその延長上にある遼東半島も実は日本は狙っていました。
漁夫の利を狙っているのは、ロシア帝国。


ロシア帝国


この領土の広さを見て下さい。
日本からすれば、アリと像ほどの違いがあります。
しかし、いかにも寒そうなところばっかりを領有していますよね。
それがために、悩みもありました。
他の国と交易をしたり、戦争をしようにも、冬になると港が凍ってしまうため、船が使い物にならなくなることです。
ロシアが一番欲しかったもの。それは、


不凍港


「凍らない港って、当たり前でしょ?」
日本の主要な港はまず凍りません。
しかしそれが、ロシアからすれば羨ましくて仕方がない。


そこでロシアは考えた。
「日清戦争で勝った日本を脅して、どさくさに紛れて彼らが清から奪ったものを自分たちのものにしよう」


彼らは、日本が清から奪った遼東半島を三国干渉によって清に返させます。

ロシア人「遼東半島は清のものだから、東アジアの平和のために清に返してやれ」
(詳しくは日清戦争(2)を参照)


その後、ロシアは満州や遼東半島に鉄道を敷くなど、実行支配を強めてゆきます。
清は瀕死の状態。
各国に領土をいいように分配され、列強の奴隷に成り下がっていた。
清民の怒りがとうとう爆発します。

義和団事件


この状況に、ロシアはほくそ笑んだことでしょう。
満州に軍隊を派遣し、制圧し、軍隊を駐留されます。
清には、もはや抗議する力も残っていませんでした。
清と一方的に条約を結ばせ、遼東半島を満州ごと、清から実質的に奪ってしまうのです。

ロシア人「遼東半島と満州は今日からオレのもんだ!」

※「満州」とは、北東アジア一帯を指します


東アジア2(顔つき)


このコソドロのような行為についてはロシア内でも反対意見があったようですが、皇帝ニコライ2世にとり入った一部の過激派によって実行されてしまいます。

清は当然怒った…が、もはや抵抗する力を持たない。
清国人「何とか命だけは…お助けを」

日本も怒った。
日本人「結局は自分が欲しかったからオレたちに返すよう言ったのか!」

おとなりの朝鮮は…
朝鮮jpg「どーせ私は何言っても無駄だし…」


でも、日本が怒っても拳を振り上げることはできない。
アリが象に喧嘩をしかけるのはあまりにも無謀だったからです。
それどころか、「ぐずぐずしていると次は日本が侵される番だ」と戦慄した。




これ以降、日本では、ある言葉がスローガンになります。


『臥薪嘗胆』

※目的達成のため、ひたすら耐え忍ぶこと



「臥薪嘗胆」なんて言葉、最近は聞かなくなりましたね。
この言葉、もちろん中国の故事から発生した言葉ですが、当時の日本人の気質にピタリと合っている気がします。
とにかく、当時の日本人は、アリが象に勝つことを本気で願い、それまではどんな苦しみにも耐える覚悟をした。
そして、国家予算の半分にも膨れ上がった軍事費にも文句ひとつ言わなかった。

とにかく、日本人は、耐えた。



そのひとつの結果が、この時期に推進された大規模な海軍拡張計画。
通称

六六艦隊計画

戦艦6隻・装甲巡洋艦6隻を中核とするバランスのとれた大艦隊をつくろうという極めて無謀で野心的な計画でしたが、10年の計画により、最終的には海軍力を4倍以上に引き上げ、世界第5位の海軍国に躍進させます。
これにより、戦力的にロシアの太平洋艦隊よりやや優位を保つことになります。



そしてもうひとつ。


日英同盟締結


内容は、こういうことです。

「日本とロシアが戦争をした場合、イギリスは中立を守ります」
「その戦争に、第3国が介入した場合、たとえば、ドイツやフランスがロシアの助太刀をした場合、イギリスは日本に助太刀します」


イギリスは当時、南アフリカの植民地獲得戦争(ボーア戦争)でかなり被害を受けていて、東アジアの戦争にまで手が回らない状況でした。
つまりイギリスの狙いとしては、自分の代わりに、ロシアがアジアで勢力を拡大する防波堤になってもらおうと日本を選んだ。
悪い言い方をすれば「捨て駒」的なところもあったかも知れません。

日本としては、大国イギリスの後押しを得ることで、戦争・もしくは戦争回避に向けての交渉を有利に進められると考えた。
もうひとつ、イギリスが中立を守れば、ロシアのバルチック艦隊を遠くヨーロッパのバルト海から日本近海まで航行させる際、イギリス所有のスエズ運河も途中の港も使えないため、ロシアはバルチック艦隊の運行を断念せざるを得ないはず。
つまり「バルチック艦隊は戦線に投入できまい」という意識で六六艦隊は計画されました。




準備は整いつつあります。
日本がロシアとようやく交渉できるようになってから、日本はある提案をします。

日本人「満州はあなたにあげる、朝鮮は僕のもの」
(満韓交換論)


この日本の提案は、ある意味常識的なものでした。
ロシアの満州支配を認める代わりに、朝鮮は自分たちの好きにさせてほしい。
満州と朝鮮(=韓国)のお互いの利権を保証するというもので、遼東半島について日本は水に流そうという態度を取っていました。
これに対して、ロシアの回答は、


ロシア人「満州はオレのもの、朝鮮は誰のものでもない」


満州が自分のものであるのは言うまでもないという傲慢な態度。
その上、朝鮮を中立にするというのは、遼東半島をいったん日本から清に返したあとに自分のものにした策略と同じにしか見えません。
日本からすれば、遼東半島を清に返したとたんに奪われた悪夢の再来です。
朝鮮を放棄すれば、やがてロシアが奪うのは目にみえている。

この時のロシアの極東は、とんでもない傲慢野郎が実権を握っていたのです。
そのことが、後にロシアを戦争に巻き込み、帝国を破滅に追いやることになるのです。




時は至れり。
日本はロシアとの国交を断絶、戦争を決意します。

日本は飲まず食わずの日々を耐え、軍備を早急に整え、その士気はすこぶる高い。
ロシアは皇帝の専制政治に不満をもつ人を内外にかかえ、重病人のよう。
臥薪嘗胆により武装したアリと、見かけは巨大だが内蔵に致命傷のある象との戦争でした。




(主な参考資料)
『坂の上の雲』歴史紀行 (JTBのMOOK)
日露戦争史 - 20世紀最初の大国間戦争 (中公新書)
NHK高校講座・日本史「日露戦争」


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「坂の上の雲」 第8話「日露開戦」感想


子規のいない坂雲。
どうなるのかと思っていましたが…

律が、ささやかながら、兄さんの跡を引き継いでくれた気がします。
できれば、律にはこのままずっとドラマに出続けてほしいなぁ。
そして、このドラマの最期をきっちりと見届けてほしい。
そんな展開も少し予想される今回でしたね。



今回は、日露戦争開戦に到るまでの日露の政治的駆け引きがメインの回でした。
なかなか見ごたえがありました。

そういった中でも、しっかりと人間ドラマを見せるところがこのドラマのいいところ。
ドラマ制作陣が伝えたいメッセージも、その中に含まれているのだと思います。



山本権兵衛と日高壮之丞


このシーン、僕は先に原作で読んだのですが、非常に好きなシーンでした。
それだけに、ドラマで採用されて嬉しかったです。

山本権兵衛と日高壮之丞。同じ薩摩出身。
彼らの略歴を少し述べます。
戊辰戦争ではお互い16才と20才という若き兵士として東北などを転戦しています。
彼らが凱旋後、東京に戻ってみると、藩兵は解散し、失業してしまいます。
今日食っていくのにも事欠くありさま。
明治政府側の薩摩藩士でさえそのような状況だったことを考えれば、明治維新直後の混乱ぶりがよく分かると思います。
彼らは窮して、いっそふたりで相撲取りになろうと考え、陣幕という関取に弟子入りを頼みこみます。
しかし、陣幕はこう言い、断ります。
「相撲で伸びてゆくためには、日常ゆっくり頭のまわる者がいい。しかし、あなたたちを見ていると、四方八方頭が回りすぎる。それでは力士としては伸びないから、他の道を考えなさい」

しかたなく相撲入りをあきらめ、当時できたばかりの築地の海軍兵学校に入って、身を立てていったのです。


戊辰戦争から生死苦楽を共にした仲間。
山本権兵衛にとってのこの決断は、断腸の思いがあったに違いありません。
後日彼は「あの時の日高の表情だけは生涯忘れない」と語っていたそうです。

山本の決断も立派なら、それを受け入れた日高も立派だと思います。
「そげな理由なら、怒る筋合いは何もなか。おいが悪かった」
と自らの欠点を率直に認めるのです。

ふたりに共通するもの。
それは、

愛国心


自分個人の名誉より、国の為を想う。
彼らふたりに象徴されるように、当時の指導者、当時の国民のほとんどすべてがこの「愛国心」を持っていたからこそ、この当時の日本が輝いて見えるのだと思います。

個人主義、個人の利益が横行する社会。
政治家も自分のことしか考えておらず、人々も自分のことしか考えていない。
現代の日本は、愛国心と偏狭ナショナリズムを同一化して一様に「悪」と決めつけてしまっている風潮があるようにも感じますが、わたしたちひとりひとりが「国家の誇り」を持たないとだめなんじゃないか?
政治家は保身でなく国家の誇りを胸に抱いて行動してもらいたいし、企業のトップには企業の利益だけでなく日本企業としての誇りをもって行動してもらいたいし、私達一人ひとりも、いろんな場面で「個人としての自分」と「日本人のひとりとしての自分」という両方の自覚をもって行動しなければならないですよね。

そうしないとこの国、本当にバラバラになりますよ。。。




好古とコサック騎兵の交流


あとは、このシーンなんかも良かったですね。
もちろん、原作には腕相撲のシーンなんかはありませんし、その後肩車をされたというシーンもありません。そういったあからさまな創作は作らない主義で小説は貫かれていますので。
ただ、好古がコサック騎兵団と楽しく語り合った、という言葉はありまして、このように締めくくられています。

「ロシアにもまだ騎士道は残っていたし、好古にも武士道が残っている。日露ともに戦場での勇敢さを美とみる美的信仰をもっていたし、自分が美であるとともに、敵もまた美であってほしいと望む心を、論理的習慣としてつねにもっている。そういう習慣の、この当時は最後の時代であった」
  (『坂の上の雲』第3巻より)



のちに奉天会戦で相まみえる相手同士だと思うと、感慨深いものがありますね。




真之と季子


最後に、真之、季子、律。
彼ら彼女らのことを言わないわけにはいかないでしょう。
まず真之。

なんかかわいいリラックマ28「どかーん」
前回の教官の時のシリアス顔とは大違いでした。
季子は季子で箱入り娘丸出しだし、律は真之をいつものくせで「淳さん」と呼んで「ご主人が…」と訂正したり、真之に似てかわいかったり…

このスリーショットは、今回唯一ほのぼのとするシーンでしたね。

最初にも書きましたけど、律っちゃんには最終話まで登場してもらいたいですリラックマ3「うん。」




(主な参考資料)
坂の上の雲〈3〉 (文春文庫)



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「坂雲」第4話解説~日清戦争~(2)


日清戦争の2回目。
今回の主題は、原作『坂の上の雲』の批判も含みます。
反対意見もありましょうが、日清戦争を述べるにあたって避けては通れない道だと思い、記事にしました。




遼東半島

日清戦争のみならず、日露戦争の激戦地でもあるこの地。


遼東半島
きままに歴史資料集様より引用)


上の図でいうと赤色の部分です。
朝鮮半島の根っこから少し不細工に伸びた、小さな半島。
誤解しやすいのですが、ここは朝鮮でなくれっきとした清の領土です。
古くから、鴨緑江をへだてて北が支那(現在の中国)領、南が朝鮮領となっていました。
特に、朝鮮に接する一帯は「満州」と呼ばれ、のちの日本による中国侵略の足がかりとなった地域です。


この地の重要性は、半島の先っぽにある天然の良港「旅順」にあります。
旅順の特異性は、以下に挙げるこういったところにあります。

○渤海と黄海の中継地点に位置し、両海域を制圧できる位置にある
○特に、渤海の制海権を完全に掌握できる
(この特性から、ヨーロッパでいう地中海の入り口になぞらえて、この当時「東洋のジブラルタル」と呼ばれることもありました)
○渤海から海路により北京を直接制圧できる位置にある
○支那と朝鮮の中間に位置し、両国に影響力を与えることができる





日本は、欲が出た。
旅順と、その後背地である遼東半島を手に入れたいという欲望に駆られた。



日本旗


旅順は、たった一日で陥落します。

この時、旅順で一般人を含む大量虐殺を日本兵は行い、「ワールド」「タイムズ」などの欧米系新聞によって全世界にそのニュースが広がってしまいます。いわゆる「旅順虐殺」ですね。
このあたりは、原作には作者独自の歴史観(司馬史観)によって作風を統一させるため、おそらく意図的に省かれています。
ドラマでは旅順虐殺を匂わせるような描写をしたせいで「原作にはないシーンをわざわざ入れるな!」とか「中国に気を遣い過ぎだ!」みたいな意見もありましたが、これはれっきとした事実です。

日本は紳士的であった??

日本が戦争においても略奪など一切せず紳士的であったというのは、あくまで欧米など列強(先進国)に対してであり、清のように下等にみられている国(後進国)については容赦なかったのです。
この戦争での朝鮮行軍中においても、日本は兵站(兵士の食糧補給)については「現地調達」ということになっていましたので、食料を地元の人々から買ったりしていたのですが、対価が払えなかったり、相手が供出を拒否した場合は「強制徴発」していました。
この事実を知れば、略奪はなかったと言い張ることがいかにナンセンスなことか、分かるでしょう。
というか、日本に限らず、紳士的な戦争なんてこの世に存在しないのです。戦争の本質は殺し合いであることを(アタリマエのことですが)忘れてはなりません。

ドラマ版『坂雲』の再評価

ドラマ版で原作にない日本兵の悪行を描いているのは、「戦争賛美の批判をかわすため」とか「ロケをさせてもらう中国に配慮したから」という単純な理由だけでなく、歴史を少しでも正しく伝えたいという制作陣のメッセージだと思います。
特に批判の多い子規の従軍中のエピソードについても、そういった意図で挿入されたのでしょう。


原作『坂の上の雲』はたしかに不朽の名作なのですが、日本の戦争悪を意図的に排除して書かれている部分がありますので、あれを歴史的事実として鵜呑みにするのは非常に危険です。
むしろ、そういった要素を入れたがために批判が絶えないドラマ版の方が、原作より『坂の上の雲』らしいと感じられ、僕は非常に評価しています。





軍部内には「この機に、北京まで攻め入り清を滅ぼしてしまうべきだ!」という意見も出たのですが、冬季で半分凍っている渤海を渡って北京まで上陸するリスクが大きすぎることや、万が一成功したとしても、清を滅ぼしてしまったら賠償金を取れる相手がいなくなる。だから、清はあえて生かしておくべきだ、ということで、山東半島の端にある威海衛で清の北洋艦隊を殲滅させる作戦に切り替えます。

この判断を最終的に下したのは、あの伊藤博文です。
賠償金のことまで考えているとは、さすがに高度な政治判断を行いますね。
稀代の政治家と言わざるを得ません。


________________________________________________________

その後、簡単に。


下関条約の締結

戦勝国の日本は、清に対し

○遼東半島を日本の統治下におくこと
○台湾を日本の統治下におくこと
○賠償金3億テール(当時の日本の国家予算の3倍以上)を支払うこと


を柱とする講和条約を清に結ばせます。
しかしそこに


三国干渉

ロシアを中心とする列強の干渉により、日本は遼東半島を手放します。

ここで少し補足を。

日本が遼東半島まで戦火を広げ、その領土を自分のものにしようとしたのは、当時からすれば後ろめたいことでも何でもなく、ごく当然のことだったのです。つまり、日本は欧米列強のマネをしただけだけなのです。
イギリス・フランス・ロシア・ドイツなどは清の領土をいちゃもんをつけてはかすめ取り、その結果、この当時の清は手足をもぎ取られた状態であった。
日本もそれに見習い、清の領土を取ろうとしたのですが、場所があまりにも悪かった。
旅順および遼東半島は、いわば清の心臓部(北京周辺)に直接手が出せる位置にあり、他の列強がもぎ取った手足とはその重要性がまるで違うのです。このことに列強は警戒し、ロシアはフランス・ドイツと組んで三国干渉を行ったし、イギリスもその干渉を黙認した。
そういう事情であったことを補足しておきます。


せっかく手に入れた虎の子を手放した日本。しかし、もうひとつの領土はがめつく狙います。
台湾は列強の関心がそこまで及ばなかったのを機会として、下関条約を理由に領有しようと軍隊を派遣します。
しかしそこで、おもわぬ民衆の反対に遭うのです。


台湾平定戦

日本による征服を不服とする人たち。台湾全土がその空気につつまれていたといってもいい。
ここでも日本は、民衆に対し凄惨な虐殺を行っています。
そして台湾は、日本初の植民地となったのですが…

この日清戦争で死んだ日本兵13000人のうち8割にあたる1万人を、この台湾平定戦で失うことになります。
その大部分が、赤痢、マラリア、コレラなどの伝染病によるものでした。
日清戦争の最大の敵は、北洋艦隊でも陸戦兵士でもなく、伝染病だったというのが皮肉な気もします。




(主な参考資料)
『坂の上の雲』歴史紀行 (JTBのMOOK)
日清戦争―東アジア近代史の転換点 (岩波新書 青版 880)
NHK高校講座・日本史「日清戦争」


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