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続・龍馬伝 (22)第2次江戸城奪還作戦


龍馬伝第4部タイトル(雲の



奥羽、北越と相次いで戦端が開かれていた頃。
戦場から遠く江戸湾の海上で、戦の行く末を注視している人物がいました。
その男は、同時に、遥か果ての北の大地に夢を馳せていた―



榎本武揚
(『新選組!!土方歳三最期の一日』より)



勝海舟と同じように生粋の江戸っ子として生まれ育った彼は、幕府の明日を担う人材のひとりとして、公費でのオランダ留学を体験した数少ない人物のひとりです。
彼がオランダで西洋式海軍についての実学を学んでいる間に、本国では幕末の激動期を迎え、4年半後、彼が祖国に帰ってきたときには、幕府は崩壊寸前でした。
その後、半年後に将軍慶喜が大政奉還、そして王政復古のクーデター、鳥羽伏見の戦い…と、それまで幕末の動乱とは無縁であった榎本を小馬鹿にするように事態はめまぐるしく変化し、幕末末期の渦に否応なしに巻き込まれることになります。


歴史とは皮肉なもの。
傾きかけた幕府を救うために航海術などを必死に学んだのだが、今やその幕府は存在しない。



榎本は、そう感じていたかも知れません。
それでも、あとに残された旧幕臣や、幕府に忠誠を誓ってきた佐幕派の藩士がいる。
彼らが新政府により追い立てられている姿は、徳川260年の断末魔の叫びをみるようであり、榎本としては、それを看過することはできなかった。
彼の頭の中に、ひとつの考えがぼんやりとした形となって現れ、それは徐々に、具体的な構想に変わりつつありました。


いまだ新政府の支配の及ばない地域―
蝦夷地に拠点をつくり、行き場のない旧幕臣たちを、開拓民として迎え入れよう。
彼らと力を合わせて、蝦夷に独立国家を設立するのだ。



当時ほとんどの日本人が、見向きもしなかった蝦夷の大地。
榎本は、この地に無限の可能性を見いだしていました。
稲作に適さないと本土の人間にソッポを向かられたその土壌は、実は畑作や酪農にとって最適の環境であること。
魚介類、昆布など海産物の宝庫であること。さらに、内陸部を開拓できれば、銀、石炭、鉄、銅など鉱物資源も豊富に手に入ること。

そして、新国家の夢―
ヨーロッパを回った榎本には、国家の理想像が明確にありました。
一部の人間が権力を握る派閥政治でなく、だれもが政治に参加できる、共和制の政治体制をつくる。
そして、他の国と優劣のない、対等な国際条約を結ぶ。
さまざまなしがらみがあり、既に交わした不平等条約に苦しむ既製の日本で行うのではない。
イギリスを脱出した人々が、未踏の大地にアメリカという自由の国を建国したように、すべてをゼロから始める新国家として、理想の国づくりを始めるのだ。


ロマンの人。
後世、榎本はこのように形容されるほど、その構想は夢に満ちたものでした。




今や実質的な幕府トップとなった勝海舟によって「海軍副総裁」の職を得た榎本には、幕府海軍のすべてが預けられていました。
総勢8艦。
「開陽」「回天」「蟠龍(ばんりゅう)」「千代田形」「長鯨」「神速」「美香保」「咸臨」
勝と西郷のギリギリの交渉によって、最強軍艦である開陽をはじめ、旧幕府海軍のほとんどの艦は榎本の掌握するところとなり、榎本は勝に感謝したことでしょうが…

そのことが、逆に榎本艦隊の行動を縛ることになります。
幕府を平和裏に解体するという、勝の策略にまんまと乗せられたのです。
「開陽をあんたに預けた意味を分かってくれ。
 あんたの軍艦が江戸湾に留まって睨みをきかせてくれるからこそ、薩長どもは手出しができず、交渉を有利にすすめることができる。慶喜公や多くの旗本が落ち着くまでは、そこを離れないでくれ」
そう勝に念を押されてしまい、慶喜一行が駿府に落ち着くまで、出航しにくくなってしまったのです。



もうひとつ、彼が品川沖を離れられない理由がありました。
開陽をも凌ぐ、最強艦船をどうしても手に入れたかったのです。


ストーン・ウォール号500


幕府がアメリカ政府から購入する予定であった、当時の最新鋭艦です。
計8門の各種砲台に6連装ガトリング砲も備える抜群の攻撃力に加え、船体全体を鉄の装甲で覆うことにより防御力を飛躍的に高めた、攻守ともに欠点のない無敵艦です。
その威容から「甲鉄」とも名付けられ、まさしく海上要塞と呼ぶにふさわしいものでした。

この最新洋上兵器の代金は50万ドル。
すでに40万ドルは幕府が支払っていたのですが、その幕府が消滅してしまったので、話が宙に浮いた状態になっていたのです。
幕府の後継は自分たちであるとして、榎本は残り10万ドルと引換えにストーン・ウォール号の引渡しをアメリカ側に要求したのですが、アメリカは日本が内戦状態だとして、局外中立を唱え引渡しを拒否。
もちろん、新政府側の引渡し要求もアメリカは拒み、品川沖に停留されたままになっていたのです。


一刻も早く、蝦夷地に向かいたい。
できることなら、奥羽や北越の戦にも参加して、彼らを勝利に導きたい。
だが一方で、勝との約束がある。
ストーン・ウォール号も何としてでも手に入れたい。



板挟みの中、榎本は、焦っていました。
どっちつかずで悩んでいるうちに、時間だけが過ぎ去っていったのです。



【第22回】第2次江戸奪還作戦



その頃、奥羽線線では、大鳥圭介の参謀であった沼間慎次郎(ぬま・しんじろう)が、ひとつの作戦を立てつつありました。
旧幕府内では、大鳥とともに伝習隊を率いる中核となっていた男。
のちの明治言論界のリーダーとなった人物だけあり、頭の回転の速さでは群を抜いていました。


この時期、白河口を攻略され奥羽列藩の士気は下がりがちになっていましたが、彼はこれを逆に好機だととらえていました。
白河を抜きながらそれ以上兵を進めることができないのは、薩長新政府側が慢性的な兵力不足に苦しんでいることと、戦線が広がりすぎたことにより戦略が散漫になっていうことの証拠である。
この機を逃すべきではない、と言うのです。


この戦争を将棋にたとえるならば、王は鶴ヶ城、玉は江戸城である。
防衛の要である白河を攻略した相手の火力はさながら「歩」が「と金」になったようなものであろう。
まずこいつを、日光に展開している大鳥・土方の金銀で封じ込め、挟み撃ちにする。


と金(反対側)

江戸から奥羽にかけての戦闘区域を将棋盤にたとえ、その盤上で駒を動かすがごとく、沼間は戦略を構築します。
彼の持論は、攻防一体。
攻撃を防御とし、防御を攻撃とする迅速な戦略こそ、最善であると考えていました。
防御を固めた後は、すぐさま攻撃に移る。
敵陣深くに入り込んでいる彰義隊と榎本艦隊を、攻撃の際の飛車角として最大限に活用する作戦を構築してゆきます。


江戸城を目視できる距離にいる唯一の部隊、彰義隊は「飛車」である。
相手の玉を攻めるときの急先鋒となるであろう。


飛車

一方、榎本艦隊は江戸城攻撃部隊を援護射撃できるだけでなく、いざという時には奥羽~北越沿岸に幅広く展開し、海上から新政府軍が攻めこむのを阻止できる。
攻守ともにすぐれたかの艦隊は、角にたとえるにふさわしい。


角


相手は、どう出るか。
それに対してこちらは、どう手を打つか。
それはさながら、江戸の西郷と、真剣勝負の対局をしているようなものでもありました。

こちらに飛車角がある限り、相手側がどれだけ敵陣深く入り込もうと、常に一発逆転のチャンスを与えていることになる。
西郷ならそれくらいは読んでくる。
飛車と角、どちらかを必ず潰そうとする。
海上の榎本艦隊は、海軍力の差が圧倒的であり、これを殲滅させることは不可能に近い。
…となると、飛車。

沼間は、近い将来、西郷が彰義隊を潰しにかかると読みます。
彼の考えでは、その戦闘は短期間では終わるまい、というものでした。
そこに勝機を見いだすのです。


彰義隊を一挙に殲滅させようとすると、常識的に考えて万に届く兵力が必要。
奥羽、北越に兵力を割かねばならない現状では、それでも数千を揃えるのがやっとだろう。
数千同士が江戸で市街戦を繰り広げるとなると、かなりの確率で、戦線は膠着する。

潜在的なその危機を、西郷は頭に入れているのか。
鳥羽伏見以来の今までの戦い方を見ていると、それでも強引に彼は兵を起こすであろう。



戦線の硬直。
そうなれば、官軍の権威は失墜する。
諸藩を味方に付け、われらの持ち駒として活用することもできる。
白河や北越の部隊は、正面の的に張り付かねばならず、身動きが取れない。
…そこを見計らって、大鳥と土方の部隊が反転し、江戸を襲う。


竜王竜馬金将銀将

飛車である、彰義隊。
角である、榎本艦隊。
金・銀は大鳥と土方の精鋭部隊。
この4枚で、ほとんど丸裸の王を詰める。


玉将



この作戦の要諦。
それは、奥羽列藩、旧幕府陸軍、彰義隊、榎本艦隊が、ひとつの命令系統の元、統一して動くことにありました。
お互いの連携こそが作戦の成否を握っていたのです。

…しかし、すでに「幕府」という司令中枢を失い、お互いがバラバラに動いているこの状況では、望むべくもありませんでした。
沼間慎次郎の作戦は、理想的には卓越した作戦でありつつも、現実味を欠き宙に浮いたまま、いつしか消滅してゆくのです。



一方の、新政府軍。
太政官と総督府、薩摩と長州、薩長と諸藩、などの軋轢を生みつつも、しかし「反乱分子の抹消」という至上目標では一致し、軍事侵攻の道をまっしぐらに突き進んでゆきます。

奥羽、北越攻略の足かせとなっていた、彰義隊。
沼間の読み通り、その攻略のため、西郷が動き出すのです。






(主な参考資料)
小説 榎本武揚―二君に仕えた奇跡の人材 (ノン・ノベル)
箱館戦争―北の大地に散ったサムライたち
戊辰戦争―敗者の明治維新 (中公新書 (455))
戊辰戦争から西南戦争へ―明治維新を考える (中公新書)
奥羽越列藩同盟 (中公新書)
幕末史(半藤一利著)
図説・幕末戊辰西南戦争―決定版 (歴史群像シリーズ)
一冊でわかるイラストでわかる図解幕末・維新―地図・写真を駆使 超ビジュアル100テーマ オールカラー (SEIBIDO MOOK)



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待っておりました!

2011/08/19(Fri)22:55

続・龍馬伝、いよいよ榎本武揚登場ですね!
待ちわびていました。
軍勢を将棋に例えてくださるとは、とっても分かりやすくて、私のような初心者にはありがたいです。

こうしてTV-Rockerさんの記事を読んでいると、いかに自分が歴史について浅くしか知っていなかったかということを実感します。その知識と記事の構成力には、毎回感服です。

それにしても第22回、いいところで終わっていますねー。もう続きが気になって気になって…!
沼間と西郷の頭脳勝負の行方は、どんな決着がつくのでしょうか。
箱館はまだまだ先ですが、この先の展開も楽しみにしています♪

榎本のロマンチストっぷり、そこがとても好きだったりします。
ではでは。

名前:くずゆ (URL) 編集

Re: 待っておりました!

2011/08/20(Sat)22:55

> 続・龍馬伝、いよいよ榎本武揚登場ですね!
> 待ちわびていました。

やっと登場しました!
もちろん、彼がこの段階で北海道開拓の意義をどの程度まで考えていたか、本当のところは分かりませんが、今回は、かなり詳細な青写真を持っていたという設定にしました。
その方が、クレバーな感じがしますしね(笑)


> それにしても第22回、いいところで終わっていますねー。もう続きが気になって気になって…!
> 沼間と西郷の頭脳勝負の行方は、どんな決着がつくのでしょうか。
> 箱館はまだまだ先ですが、この先の展開も楽しみにしています♪

気になりますか。ふふふ♪
西郷と沼間の頭脳戦は、次回の上田戦争で間接的な決着が付きますね。
戦略眼としては沼間の方が上だったのかも知れませんが、実行力がなければ絵に描いた餅になってしまいますよね。
西郷は、人を使って事を成すのがうまいですから。
彼ほど新政府内で慕われた人はいないのではないでしょうか?
その差のようなものが、次回の結果に現れてきますよね。


僕も早く箱館戦争を書きたくてうずうずしています。

名前:TV-Rocker (URL) 編集

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