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「坂雲」解説番外編~第0次世界大戦の衝撃~


昨日、NHKでこんな番組が放送されていました。

NHKスペシャル プロジェクトJAPAN
《坂の上の雲》の時代 第0次世界大戦~日露戦争・渦巻いた列強の思惑





『第0次世界大戦』


ものものしいタイトルが付いています。
こんな言葉が存在すること自体、知りませんでした。

が…番組を見て、その意味が分かりました。
これは、日露戦争を世界史の上で定義付ける言葉として使われたものだったのですね。
日露戦争は日本とロシアの1対1の戦争で、世界大戦ではありません。
表面をみればそうですが、実はその裏では、世界の列強の熾烈な外交争いがあった。
そしてそれが、第1次世界大戦、第2次世界大戦へとつながってゆく歴史の流れを考えたときに、日露戦争をこのように定義付けるのは決して間違っていない。

そう番組では訴えています。


番組では、日露戦争までの日本・ロシア・イギリス・ドイツ・フランス・アメリカなど列強の思惑がどのように絡み合い、そして最終的になぜ戦争に至ったか、検証しています。
ほぼ、以前に自分のブログで書いた臥薪嘗胆(日露戦争前夜)の内容ですが、ここに書ききれていない詳細な内容が分かりやすく説明されています。
今回は、それを記事にしたものです。


________________________________________________________

シベリア鉄道

広大なロシア帝国の東西を鉄道で結び、国家として有機的に機能させようという壮大な計画です。
計画の指導者は、時の大蔵大臣・ウィッテ。
ロシア内にあって目先の利益にとらわれず、長期的な視野に立った国家のプランニングができる数少ない人物です。
のちに皇帝に取り入ろうとするやからどもによって失脚させられますが、彼がロシアの権力を握り続けていたならば、世界史はどう変わっていたか、分かりません。


シベリア鉄道


10年以上の歳月をかけ、ロシアはシベリア鉄道を東へ東へと伸ばしてゆきます。


シベリア鉄道が日本に与えたインパクトは非常に大きかった。
この鉄道が完成することにより、東アジアにロシアが影響力を強く持つことになるのは明らか。
片田舎であった極東に、ロシア帝国の血流が通うようになる。
ロシアの大軍を即時に東に運べ、同時に食料・物資の補給も容易になる。

ロシアは領土拡大と不凍港の獲得が悲願だったのですが、ヨーロッパ方面は列強がうずまき、この頃にはもはや大きな領土拡大は不可能に違い状態だったのです。
一方、東アジアは(日本も含め)弱小国がたむろしており、より少ない労力で大きな利益を得られる。
必然、ロシアは東にその目を向けることになります。

そもそも「ウラジオストク」=「東を征服せよ」という意味。
日本が一番恐れたこと。それは、ロシアの南下政策が本格化することだったのです。
実際、ロシアは満州に手を伸ばし始め、その恐れはリアリティを帯びてきます。




東清鉄道と南満州支線


シベリア鉄道に続き、満州に東清鉄道、遼東半島に南満州支線を敷く計画を立てるロシア。
満州全体の実効支配に向け、着々と準備を進めてゆきます。

日本が最も恐れたこと。
それは、ロシアが朝鮮をも併合してしまうことでした。
それは、日本にとって、ロシアの脅威が日本海を隔てたすぐそばまで迫ることを意味します。

日本は、選択を迫られます。
あくまで交渉によって領土問題を解決するか、戦争によって解決するか。

戦争をするなら、、先手必勝しか道はない。
鉄道が全線開通してヨーロッパ方面軍を総動員されたら、勝機はゼロに等しい。
シベリア鉄道が半開通の今なら、東アジア方面軍だけを相手にしていればいい。

迷う日本に対し、列強の陰謀が渦巻きます。




日本を日露戦争に向かわせた要因として、同盟を結んだイギリスの存在はいろんな本にも載っていますが、この番組で注目したのは、アメリカの存在です。

19世紀末にイギリスを抜いて世界一の工業大国に成長したアメリカ。
そのアメリカが目をつけたのも、清でした。
特に、いまだイギリスなどヨーロッパ勢の経済的侵略の及んでいない最後の未開の地・満州をターゲットと定めたため、その満州を実効支配しているロシアと必然的に対立することになります。
つまりアメリカは、満州を自国の市場にするため、日本の力を利用して、満州からロシアを追いだそうと画策するのです。


アメリカの魂胆


上の風刺画はおもしろい。
馬に乗った日本の明治天皇を崖っぷちに追い詰めているのは、イギリスとアメリカです。
この2国によって、日本は、戦争以外の選択肢を失ってゆき、ついにロシアと一戦交えるところまで追い詰められてゆくのです。



他にも、さまざまな国の思惑がありました。
ヨーロッパにおいてロシアと国境を接するドイツは、ロシアの兵力をアジア方面に避けたいがために、日英独の三国同盟を模索します。
ドイツと国境を接するフランスは、イギリスやドイツへの対抗心から、ロシアと手を組もうとする。

そういった、列強の代理戦争がいわば「日露戦争」の真実である。
そう番組は訴えています。
そしてこの日露戦争の戦後処理の行方が、第1次世界大戦、第2次世界大戦(日本においては太平洋戦争)につながったという締めくくりは、歴史を横断的に理解する上で非常に参考になりました。

素晴らしい番組だったと思います。


________________________________________________________

ここからは、僕個人の意見で、番組の内容を離れますのであしからず。


ひとつ気になったのが、このような有益な番組の放送時期を、なぜわざわざ『坂の上の雲』のドラマ終了後に持ってきたのか。
ただでさえ歴史捏造、自虐史観と批判の多いドラマに、この番組が追い打ちをかけ、批判に輪をかけてしまうことを恐れたからか。
それならば、非常に残念なことだと思います。


歴史は多くの人々の意思決定の集合体なので、事象はひとつでも、見方(立場)によってまったく異なった印象になることはよくあることです。
たとえば、原作『坂の上の雲』はその作風のため、あくまで日本中心に描かれ、世界から見た日本像も極力良い部分だけを切り取って書いています。悪く言えば、都合の悪いことは切り捨てている。
必要以上に美化されているのです。
この作品は、高度経済成長期に書かれたからそれはそれでいいんですよ。
人々の経済成長と、明治初期の時代とを、坂の上を登っていく気風として重ね合わせたわけです。


でも現代は違う。
もはやそういう時代ではない。
日本は坂の上の頂上を通り越して、下り坂にさしかかっている。
「下り坂」という表現が悪ければ、成長期を過ぎて、国家としての成熟期に入っている。
これから大切なのは、その下り坂をいかに安全に降りるか、ということ。

こういう時代こそ、過去の日本の良い部分だけでなく悪い部分も冷静に見つけ直すことが必要。
この番組のように、日露開戦の決定に日本が主体的に関わった面だけでなく、列強に翻弄され、引きずり回された事実もよく見なければならない。



そして、もうひとつ、最近のニュースを見て強く思うことがあります。

日本人ひとりひとりが、
「もはや勝ち負けの時代でなく、協調の時代に入った」
ことを認識すべきではないでしょうか?
そして、
「日本が率先して、相互理解と協調の世界を作り上げてゆくべき」
だと思います。



普天間基地の問題でも、アメリカの主張に負けたのなんのと言う前に、普天間も含めた日本の米軍基地の役割そのものをアメリカと冷静に話し合うことが必要だと思う。
アメリカがそこまでして基地を沖縄に置きたい理由をちゃんと理解した上で、その軍事的役割(抑止力としての役割など)と、基地があることによる沖縄県民の苦痛の両方を交渉のテーブルに載せ、お互いがお互いを理解した上で将来の基地の在り方を真剣に、前向きに検討してほしい。
「基地を県外に追放させたら勝ち、県内なら負け」とかのレベルではない。


尖閣諸島の問題でも、流出ビデオを何千回も流して中国漁船が故意に当てたのなんだのと騒ぎ立てる前に、なぜ中国がそこまであの島々の領有にこだわるのか、理解することも大事だと思う。
日本が尖閣諸島の領有を宣言したのは、ちょうど日清戦争と日露戦争の間で、義和団事件なんかで中国(清)が国外に目を向ける余裕なんてなかった時代。そんな時に日本は、誰も領有していない尖閣諸島に日本の国旗を立て、領有を宣言した。
もちろん国際的には合法だし中国の非難は的外れだけど、「お前らは、オレたちが何もできない時に、何の相談もなく先に横取りしただけだろ」と主張する中国の立場も理解できなくもない。
そういう歴史的背景を中立に伝えた報道は、ほとんどなかったように思う。
日中関係の悪化は、マスコミの無責任な報道の責任ですよ。

お互いの民族をけなし合って関係を悪化させても、何もいいことないでしょ?
領有の問題、その資源の問題、冷静に2国間で話し合って、何も日本が独り占めしなくても、利益を分配しても僕はいいと思います。お互いに牽制し合って資源開発ができない今の状況よりも、協力して資源を分け合ったほうが、よっぽど日本のためになるんじゃないか?




最後に、NHKさんにお願いです。
こういった番組が、もっと放送されますように。
そして願わくば、ドラマとオンタイムで放送され、もっと多くの人の注目を集めますように。





(主な参考資料)
プロジェクトJAPAN《坂の上の雲》の時代 第0次世界大戦~日露戦争・渦巻いた列強の思惑
(今のところ再放送の情報はありません)



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