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「船中八策」に込めた龍馬の先見性


新生日本の青写真 「船中八策」


船中八策を読む後藤


船上で書き表したというのがロマンチックで、好奇心をそそります。
ドラマでは汚い字で(?)龍馬が書いていましたね。
「揺れる船の中だから、当然だろう…」と思っていたら、後藤象二郎に書き直すよう言われてました。
実際は、船が平戸島の沖にさしかかった時、海援隊の文章作成役・長岡謙吉を呼び口頭で書き取らせたものと言われています。



さて、その内容は前回の記事を見てもらうとして、要約すると、


○大政奉還  ○官制刷新
○法典制定  ○親兵設置
○議会開設  ○条約改正
○海軍拡張  ○貨幣整備

この短い言葉の中に、「政治」「経済」「外交・安全保障」と、国家の3本柱というべき内容をすべて盛り込んでいるのですから、実に驚くべきことだと思います。
この「船中八策」が、前述したように、龍馬が描く新生日本の青写真(完成予想図)であり、今後の龍馬のすべての行動は、この八策の達成に向けて進められてゆくのです。
そういったことも、今後ドラマの中で明らかになってゆくものと思われます。


今回は、「船中八策」に込められた龍馬の先見性を見てゆきたいと思います。
※以下の「船中八策」の番号は、分かりやすいように原文の上から順番に便宜的につけた番号ですので、そのような番号が最初から振られていたわけではありません。あしからず。



(1)政治の青写真


一、天下の政権を朝廷に奉還せしめ、政令よろしく朝廷より出ずべきこと。
  (政権を朝廷に返還する。いわゆる「大政奉還」)

二、上下議政局を設け、議員を置きて万機を参賛せしめ、万機よろしく公議に決すべきこと。
  (イギリスに習い上院・下院の2院制を敷き、議会によって国家の方針を決める)

三、有材の公卿諸侯および天下の人材を顧問に備え官爵を賜い、よろしく従来有名無実の官を除くべきこと。
  (有能な公家・将軍及び諸藩の代表者を政治に参加させる)

七、御親兵を置き、帝都を守衛せしむべきこと。
  (天皇直属の軍隊を京都に置き、天皇をお護りする)



のちに「公議政体論」と言われる、龍馬の政治構想。
秩序の中心として、その中心には「天皇」を据えることも忘れていはいません。
(※公議政体論については、以前に「清風亭会談」お互いの狙いで触れたことがあります)
もっとも、龍馬のオリジナルではなく、イギリスの「議院内閣制」をもとにしています。

当時のイギリスの議会は、2院制でした。
それに習い、議会を上院と下院に分け、

上院 - 徳川家を含めた有力諸侯や公家で構成
下院 - 諸藩の有能な志士たちで構成


ご存知の通り、現在の日本は2院制(衆議院と参議院)を採っていますので、ここまでは一致します。
龍馬の頭の中に「選挙」という発想がどこまであったかは残念ながら僕にも分からないのですが、大政奉還がなされた翌日に龍馬が作成した「新官制擬定書」によると、メンバーを龍馬が選定していますので、完全な普通選挙の発想はなかったということでしょうか。
「両院の議論による多数決で決する」政治システムなので、内閣を作るという発想もなかったと思います。

それでも、今までの「幕府内の老中のみによる決定」や、今までの大政奉還論者が説いていたところの「徳川と雄藩藩主の合議による決定」に比べると格段に開かれた政治であり、いくらイギリスに先例があるとはいえ、このような建白を堂々と出せるところに龍馬の先見性があると僕は思います。



(2)経済の青写真


八、金銀物貨よろしく外国と平均の法を設くべきこと。
  (金銀の交換比率を外国と同じにし、経済を活性化させる)



最後の項目で、金銀の交換比率を外国と同じにすることが書かれていました。
(ドラマでは最後から2番目になりますが、実際の文章では最後にきています)

どういうことかと言うと、当時、日本国内の金銀交換比率と、海外での金銀交換比率が違っていたんですね。

日本 … 金1=銀5
海外 … 金1=銀15

単純化して図で示すと、こういうことです。


金銀交換比率


つまり、日本と海外で金と銀を交換するだけで、3倍ずつ金が増えてゆくのです。
これにより、日本の金がどんどん海外に流出してゆきます。
幕府はこれに対し、小判の金含有量を減らす対策に出ますが、経済原理により、お金の価値が下がる=物価の価値が相対的に上がる、つまりインフレを引き起こしてしまいます。
幕末は、急激なインフレにより経済が大混乱しますが、その収拾のため、元凶となっている金銀の交換比率を海外と同一にしようと試みるのです。
この問題は、幕府でも散々議論されてきましたが、まとまらずじまいでした。
というのは、日本でも世界でも、金・銀というのは、当時のお金そのもの。
つまりこれは、対外的には通貨レート交渉であり、内政的には貨幣改革であり、そういった問題を内包している難しさがあるのです。
これを龍馬は本腰を据えてやろう、というわけなのです。



(3)外交・安全保障の青写真


四、外国の交際広く公議を採り、あらたに至当に規約を立つべきこと。
  (外国と新たな条約を結び、現在の不平等条約の解消を図る)

五、海軍よろしく拡張すべきこと。
  (日本の海軍力を強化する)

六、古来の律令を折衷し、あらたに無窮の大典を撰定すべき事。
  (今までの法律をもとに、日本の憲法を新たに作成する)



以上見てきたように、日本の経済発展にも列強との不平等な関係がネックになっているのです。
そういった欧米列強諸国との優劣関係を根本から変え、日本の独立を保持するためには、欧米先進国とも対等に付き合うことが必要である。
そのためには、
(1)憲法・政治機構を整え、西洋諸国と同じく文明国として認めてもらう
(2)軍事的劣位を解消し、西洋と肩を並べる海軍を編成する
その上で、
(3)現在の不平等条約を改正し、平等な貿易協定を結ぶ
ことが必要だと龍馬は考えた。

お気づきのことかと思いますが、近代での国家間交渉にも通じる、極めて先進的な考え方です。



龍馬の恐るべきところは、こういった「政治」「経済」「外交・安全保障」を、別々のことがらとして捉えていたのでなく、それらすべては連動する1つの事象であるかのように、一体として捉えていたことです。
「船中八策」を見る限りでは、第一項の「大政奉還」を除き、残り七策の優劣や順序はないような気がします。
残り七策すべてが、大政奉還後の新生日本の青写真なのです。

この時代の志士たちのほとんどは、大政奉還(幕府の政権返上)を武力によって成さしめるのか、それとも建白書によって平和裏に行うのか、その目の前の大問題に一生懸命であって、大政奉還後の政局まで目に見える形で考えている人はほとんどいなかったと思われます。
「龍馬のみが鮮明であった」という、司馬遼太郎さんの言葉(以前の記事より)の言葉の真実味がここでも知らされます。




さて、こういった青写真を現実にすべく、龍馬は走り出します。
龍馬にとっては、そう。
まさにスタートラインに立ったところだったのです。

一方、薩摩の西郷隆盛を中心とする武力倒幕派は、幕府に対抗しうるだけの軍事力を増強し、軍隊発動の機会を虎視眈々と狙ってゆきます。


大政奉還の建白書が、先か。
武力衝突が、先か。
この時の幕末は、水面下で両陣営のせめぎ合いが火花を散らす、ギリギリの局面に差し掛かっていたのです。




(主な参考資料)
龍馬のすべて(平尾道雄著・高知新聞社)
[図解]坂本龍馬の行動学(武村鏡村著・PHP研究所)



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