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「海援隊」最大のライバル


加速する円高が、ニュースで騒がれています。
昨日「1ドル=80円88銭」の最高値を更新。「1ドル=79円75銭」の史上最高値(1995年4月)を追い抜くのは時間の問題だ、と言われています。

今日は、日米通貨の為替レート交渉を歴史上初めて行った人物の話です。
彼が作った組織が、のちに坂本龍馬の「海援隊」最大のライバルとして立ちはだかるのです。


外国奉行・小栗忠順


「龍馬伝」では、フランスとの交渉の時ぐらいにしか現れない、非常に影の薄い存在ですが、実は相当のヤリ手です。
※龍馬伝だけでなく、一般的に幕末の幕臣は勝海舟以外はみな無能な人間のように扱われることが多いですが、実際には彼を初めて有能な人材はたくさんいたというのが事実です。


小栗忠順がまだ幕臣の中心人物になる前、彼は「日米修好通商条約」批准のため、勝海舟の咸臨丸と同じく、ポーハタン号に乗り込んでアメリカに渡っています。
到着後、ホワイトハウスで彼が行ったのが、前述の通貨レート交渉。
この交渉そのものはアメリカの強い反発もあり彼の思い通りにはいかなかったのですが、アメリカをして「日本に小栗忠順という名の経済人あり」と、彼だけでなく日本の評価を挙げるのにも貢献しています。

彼は、龍馬や弥太郎にも通じる「海外とのビジネス感覚」を持つ、当時としては数少ない日本人のひとりだったのです。


もうひとつの彼の特徴が、外国通であること。
ポーハタン号に乗ってアメリカに渡ったあと、大西洋を回って帰国しています。つまり世界一周したのです。
この間に、彼は世界の情報を得、英語を習得しています。
のちにはフランス語も習得し、幕府とフランスとを結びつけることにも大きく貢献しています。

小栗忠順の世界一周500



彼が帰国後、つくったもの。
それが、

兵庫商社

「日本最初の株式会社」という称号は、一般的には亀山社中や海援隊に与えられることが多いですが、「キチンとした役員・定款を備えた会社としては、小栗忠順の兵庫商社こそ日本最初の株式会社である」という意見を持つ専門家も多くいます。
もちろん、知名度ではダントツに亀山社中・海援隊に負けてますけどね。


彼がこの商社を作る目的を述べた建議書があります。
それによると、

「外国人と取引致し候には、いずれも外国貿易の商社(西名コンペニー)の法に基づき申さず候ては、とても盛大の貿易と御国の利益に相成り申すまじくと存じ奉り候」

つまり、「日本において利益を独占している外国の商社と対等に競争するには、日本も外国に習い「カンパニー」を設立する必要がある」と説いているのです。


日本が開国し、欧米諸国と自由貿易が始まった当時、外国商社の組織的なビジネス活動に個人商店方式の日本は完全に翻弄されてしまい、利益は外国商社が独占している状態でした。日本の伝統的な物流は破壊され、金の流出とあいまって国内では物価が高騰(=インフレ)、庶民の生活を圧迫していました。
それに対抗するためには《目には目を》つまり《カンパニーにはカンパニーを》ということで小栗が切望したのが、この「兵庫商社」だったのです。

1867年6月、兵庫商社は設立されます。
当時の日本の経済の中心だった「大坂」の主な商人20名が出資者兼役員となります。
それ以外にも、身分の隔たりなく、誰でも出資できるものとし、出資額に応じて配当が割り当てられる仕組みになっていました。
株式会社方式という面では、兵庫商社が最初だったのです。
これにより、100万両もの出資金を引き出させたこの巨大組織に、2ヶ月前にできたばかりの海援隊もショックを受けたようで、約規など海援隊にとって最も重要な項目だけを載せている「海援隊日史」にそのことが書かれていることでも、そのインパクトの大きさが分かります。


貿易に関して、

外国商社 vs 海援隊(反幕) vs 兵庫商社(幕府)

という、三つどもえの争いが始まる前兆でもあったのです。



しかし、そのわずか半年後、兵庫商社は消滅します。
「鳥羽伏見の戦い」勃発により、幕府勢力が滅亡過程に入ったからです。



明治に入り、兵庫商社は滅亡しましたが、その魂は受け継がれます。
海援隊  → 三菱
兵庫商社 → 三井
と受け継がれ、明治において、三菱と三井は「仁義なきビジネス戦争」を繰り広げることになるのです…




(主な参考資料)
坂本龍馬と海援隊―日本を変えた男のビジネス魂 (講談社文庫)
FX The Gate「小栗上野介が駆け抜けた時代」
東善寺「小栗上野介の株式会社」



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