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「坂の上の雲」 第13話「日本海海戦」感想


目標は、敵の旗艦・スワロフであった。





日本海海戦



はじめの砲撃戦。
ものすごい迫力です。

敵の位置を測り、それを各砲台まで伝え、それをもとに射撃を行う。
日頃の訓練通り、正確にそれを行う日本の水兵たち。
この描写が、妙に緊張感があるんですよね。

カメラアングルが素晴らしく、まるで自分が旗艦・三笠に搭乗しているような錯覚に陥ります。
パノラマでの戦艦同士の砲撃戦も、迫力充分です。
すごい!!



また印象的だったのが、不動の東郷。
この作戦は、ドラマ中でもあったように、旋回運動時に最大の弱点をさらす。
当時の艦砲、特に目標が地上でなく動きまわる艦隊であった場合、直撃させることができるかどうかは、熟練度はもちろん、それと同じくらい当てずっぽうの要素も強かった。
この一大決戦を前に、運に賭けてみた東郷の決断力は見事です。

…もっとも、旋回中に運悪く三笠が直撃を喰らっていた場合、日本海海戦は一方的な敗北に終わり、東郷はその汚名を後世に残すことになったのでしょうが。
歴史とは不思議なものです。。。



…そして、秋山真之。
ナレーションのみではありましたが、この作戦の立案者が彼であることを伝えてくれてよかったです。
そして、彼と東郷のやり取りは、このドラマの見どころのひとつでしょう。


長官!武士の情けであります!


彼の熱い、激情的な性格。
作戦家としての冷静な一面より、素の彼が現れてしまうんでしょうね、こんな時は。
対する東郷の、どこまでも徹頭徹尾、冷酷ともいえる冷静さ。
この対比は、非常に良かったです。



そして…子規。
日本海海戦の最中に、画面が切り替わるんですよね。
談笑しつつも、どこか静寂な暮らし。
子規を懐かしむ人々。

情報が発達していなかった当時は、こうやって、待つしかなかったのですね。
海戦と平和な日常。
なんだかどちらかが空想であるかのような、そんな不思議な感覚に襲われました。






―戦争の終結。
すべての戦争がそうであるかのように、物哀しい終わり方でしたね。
エンディングも、このドラマらしいというか、飾り立てることもなく、ひっそりとした終わり方です。

エンディングの Stand Alone を聞きながら、この最後の文章を書いています。
見ているときはそうでもなかったのですが、見終わったあとになぜか涙が出てくるんのです。。。

改めて、素晴らしいドラマをありがとうございました。


________________________________________________________
おまけ

神明はただ平素の鍛錬に力め
戦はずしてすでに勝てる者に勝利の栄冠を授くると同時に、
一勝に満足して治平に安んずる者よりただちにこれをうばふ。


Heaven gives the crown of victory to those only who by habitual preparation win without fighting, and at the same time forthwith deprives of that crown those who, content with one success, give themselves up to the ease of peace.

(引用元:http://www.z-flag.jp/maxim/tighten.html



皆様、今年は大変お世話になりました。
『続・龍馬伝』の執筆開始から始まったこのブログも、ほとんど進歩のないまま?とうとう大晦日を迎えることとなってしまいました(笑)
来年は、自分自身の目標もあることですし、この言葉のように、一時の成功に油断せず、平素の努力に努めてゆきたいと思います。
来年も本ブログをよろしくお願いします。
良いお年をお迎えください。

Thank you very much for viewing my blog this year.
Starting with writing the article of "The Continuation of Ryoma-den," this blog finally came to the end of this year, without few progress^^
Next year, i have a purpose, so i'll try to keep on making habitual preparations, as these words above.
Please treat this blog well next year, too.
I hope you will have a good year-end, and also happy new year!



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「坂の上の雲」 第12話「敵艦見ゆ」感想


とうとう1週間後のアップになってしまいました。。。
済みませんリラックマ58「ペコリ」




勝つわよね



戦時中の話。
当たり前のことですが、このドラマは、戦時中の話です。

現代の日本人のほとんどが経験のない、戦時中の話。
もし、自分が「待つ身」であったなら、どう感じたのだろうか。
やはり、愚問だと分かっていても、「勝ちますよね?」と必ず尋ねていたと思う。
自信のある返事が返っていて、少し、心配が和らぐ。
そうだろうな、と感じさせる最初のシーンです。





…そして、不意に始まる戦争。
このドラマでのロシア軍は、本当に不気味ですよね。
強いのか弱いのか分からない。
賢いのか愚かなのか分からない。
とにかく、野獣のように攻めてくる。


…それにしても、どこでロケをしているのでしょうか。
極寒の地。降りしきる雪。
どこまでもリアリティを追求しようとする製作者の意図が憎いですよね。




「戦争による、財政的滅亡」
という危機感が最初からあったために、日本政府が、この時ほど、国家運営の上で、
財政的感覚を鋭くしたことは、それ以前にも、それ以降にもない。

この、同じ民族の同じ国が、遥かな後年、財政的にも無謀極まりない「太平洋戦争」をやったということは、
ほとんど信じがたいことであった。




恐ろしい言葉ですよね。
たしかに僕も、日清・日露戦争と太平洋戦争を比べてみて、これが同じ国家のすることかと疑ってしまうことはあります。
ただ、こういうことだと思うんですよね。
日露戦争の勝利(といえるかどうかは別問題として…)に浮かれた日本が、うぬぼれ、外国を甘く見た結果が、あの無残な敗北につながったのだと…

さらにそこから立ち上がった日本が、やはりうぬぼれ、バブル崩壊や今日の状況を招いたことを考えると、「歴史は繰り返す」という言葉が、僕らに重くのしかかるのですよね。

さらに、この言葉を書き綴った司馬遼太郎さんが現代の日本を見たらどうなるのだろうか、と考えると…
国家財政が破綻しかけているのにも関わらず、抜本的な政策を行わず、ずるずると時間だけが経過している現代の日本を眺めたらば…






秋山。神速をもって行動せよ。



奉天会戦。
児玉元帥は、このドラマ中で、非常にかっこ良く描かれていますよね。
決してスーパーマンではないのだが、自分の使命を全うしようとする信念を持っている。
彼を始め、このドラマに出てくる人物は、本当に素敵です。






バルチック艦隊


…そして、いよいよ表れたバルチック艦隊。
この辺りの緊迫感は、次回・最終回に向けての盛り上がりを予感させますよね。


…しかし実は、この段階で、バルチック艦隊はすでに様々な問題を抱えていたのです。
ロシアでは圧政に苦しむ市民が大規模なデモを起こすも、ニコライ2世によって弾圧されます。
いわゆる「血の日曜日事件」によって、国内は混乱し、とても挙国一致して戦争を戦える状況ではなかった。
日本国内がひとつになっていたのとは対照的です。

さらにバルチック艦隊は、艦隊は立派でもそこに登場する乗組員は熟練度の低いものも少なくなく、航行の途中でイギリス漁船を誤射するという事件を引き起こし、西欧各国が局外中立を理由に彼らの植民地港での石炭・食料・水などの補給を拒んだため、その航行に非常な悪影響を与えたんですね。
長引く航海、手紙などにより知る国内の混乱などにより、バルチック艦隊の一般水夫のモチベーションは相当に下がっていたとも言われています。
これも、日本が水夫の熟練度を重視していたのとは対照的ですよね。



最後に、
「本日天気晴朗ナレドモ浪高シ」
の一文については、少し首をひねった人も多いかと思います。

この言葉の「浪高シ」は、波が高いため、当初の計画である水雷によるバルチック艦隊足止め作戦が不可能になったという、こちらにとって不利な状況を打電しているものです。
実際、秋山真之は、バルチック艦隊との決戦に当たり、敵艦隊の動き、天候などを考慮して、ありとあらゆるパターンの戦略を考えていたと言われています。

そのあたり、昨年の第2部までは真之の作戦家としての魅力が存分に発揮されていたのが、第3部に入ってからはすぐにいらいらしたり、人の意見を聞かなかったり、あまり良く描かれていないような…
T字戦法の発案も東郷に奪われてしまったようですし…

日本海海戦の作戦立案に当たり、真之が苦しみ抜いた末、誰も考えつかないような奇想天外な策略を生み出す様子をできればドラマで描いて欲しかったですね。



書きたいことは山ほどあるのですが、最近時間がない関係で、以上とさせていただきます。
次回は…泣いてしまうんでしょうね、きっと。。。




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「坂の上の雲」 第11話「二〇三高地」感想


※記事のアップが大幅に遅れ、申し訳ないですリラックマ58「ペコリ」


亡国。
国が滅びる。



あとから歴史を見る我々には想像もできないような、当時の人々の苦悶。
そういった、当時の歴史の息吹をきっちりと表現してくれているドラマ。


亡国の緊張感。
だからこそ、今の日本にはない輝きがある。



旅順攻撃に必死の乃木軍もそうですが、その結果を見守るしかなかった連合艦隊の苦しみもまた、今回感じました。
こういった状況の場合、そこに従事している人より、傍観者の方が苦しかったりするんですよね。
当事者は、いわば全力を出してやるしかない。結果を考え一喜一憂している余裕なんてない。
だが、見守るしかない立場の人間は、何も出来ない分、歯がゆい苦しみが常につきまとう。
そういった、その当時の立場の人になりきって考えないとなかなか見えてこない部分を、映像で表現し、視聴者に気づかせてくれる。
やはり一流です。




203高地への攻撃目標変更


そして、203高地への攻撃目標変更。
このあたり、悲壮感が漂って、乃木の気持ち、伊地知の気持ち、第3軍の気持ち…それを思い、目頭が熱くなるのを感じていました。


近代国家は、国民に「福祉」をのみ与えるものではなく、「戦場での死」をも強制するものであった。


司馬遼太郎さんの、原作の言葉でしょうか。
重く深いですよね。
そしてこの言葉をあえて使った、制作陣のメッセージも込められているのではないか。

話は少しそれますが、これは、現代の日本人へのメッセージでもあると思うんですよね。
日本がおかしくなっていったのは、国家のことはお上に任せっきりになり、いわば国家に「福祉(=利益)」のみを期待して、「戦場での死(=犠牲)」を嫌ったところから発生しているのではないか。

今でも、口を開けば「政治家が悪い」「あの発言は何だ」と大合唱ですが、そもそも、その政治家を選んだのは誰なのか。我々ではなかったのか。
増税はいやだけど、福祉はきっちりしてくれ。
そういう、犠牲を嫌い利益のみを求める国民の声がいわば政治家に見透かされて、今の混乱を招いたのではないのか。
そうも思えるんですよね。


この時代の国民が、幸せだったか否か。
国家をどう考えていたのか。


もちろんいかなる戦争に正義はなく、所詮は集団での殺し合いであることには変わりありませんが、それでもあえて、国家の将来に自分の未来を重ねて一生懸命生きた、名も無き国民ひとりひとりに、僕ら現代人は学ぶべきだと思います。

今の日本の国民を見たら、当時の人々に笑われるかも知れませんね。
「自分の国家のことなのに、なにをひとごとのように考えているんだ」と…




アレ以来、わしの命はお前に預けちょる


男の約束。
そういったものを律儀に守ろうとするのが、乃木らしいですよね。
僕は彼の生き方を肯定しますし、男の美学のようなものを感じます。
誰がなんと言おうと、彼はやはり偉大だと思います。




203への総攻撃


203高地への最後の総攻撃。
戦闘シーンの描写をこれだけ長い時間かけて映し出すというのが、このドラマのひとつの特徴でしょうか。
以前に見た『THE PACIFIC』という、太平洋戦争を舞台にしたアメリカのドラマも、戦闘シーンを詳細に描いていましたが、日本のドラマ、映画を含め、非常に稀なケースだと思います。


「そこから旅順港は見えるか」


旅順港の位置、および敵戦艦への被弾状況を的確に知ることができた日本軍。
旅順艦隊を全滅させた日本軍は、いよいよ次のステップへと移ってゆくのですね。

…驚かされたのは、ここで、戦争の犠牲者である旅順の一般市民の姿を、わずかではあったのですが、描いていたこと。
戦争の犠牲者は常に、何の罪もない一般人なんですよね。
製作者の、隠れたメッセージでもある気がします。




血の日曜日。
奉天会戦。
…そして、日本海海戦へ。



次回予告を見ただけで、泣きそうになります。。。。



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「坂の上の雲」 第10話「旅順総攻撃」感想


血生臭い戦争が始まる。


これから始まる旅順攻略戦の凄惨さを連想させるような、そしてその先に待ち受ける、日本海海戦に至る連合艦隊の苦悩を連想させるような、そういうオープニング。

もちろんこれは、僕自身がその歴史を知っているから余計にそう感じただけであって、製作者の意図ではないのかも知れませんが、とにかく、僕はなぜかそう感じたんです。
そんなことを思いながら、待ちに待った1年越しの歴史的ドラマは、幕を開けました。


ただ、自分にとってこの1年間は長かったかといえば、ほとんどの時間は『坂の上の雲』のことを忘れていたこともあり(え…?汗)「なんだ、もう始まるの?」という感じでした。
去年から読み始め、途中になっていた原作は途中のページで止まっていて、それはこの1年間読まれることはなく、気づいたらこの日を迎えていました。

…ということで、今年は「原作はこう書かれてある」的なアプローチはできません。
 済まぬ―
リラックマ58「ペコリ」




今回の主題は、203高地への作戦変更に至るまでの旅順要塞攻略戦です。
多大な犠牲者を出しながら、最終的には203高地を占領し、旅順港に潜むロシア艦隊に痛撃を与えられたからこそ、連合艦隊はあのバルチック艦隊に対して十分に準備をした上で迎え撃つことができた。
莫大な犠牲者数と、旅順攻略におけるその後の作戦の成功と、両方をてんびんにかけ、それがどちらに傾くかによって、乃木は愚将にも稀代の司令官にもなり得る。
評価の分かれる乃木の戦(いくさ)を、このドラマでどう捉えるのか。
ここは、非常に興味がありました。


まず感じたのは、日本とロシアの描き方の巧さですね。
日本サイドで描きながらも、必ずしも日本を正当化していないので、視聴者はこの戦争を極めて客観的に見ることができる。

一方、ロシア軍の存在は、秘密のベールに包み込んだままにしているのですね。
旅順要塞の様子を含め、一切、彼らの動きを映像にしないことで、未知の敵と遭遇する恐怖心を煽っている。
このドラマのリアリティを増幅させるいい演出だと思いました。


数年前の、クリント・イーストウッド監督の「父親たちの星条旗」を思い出します。
硫黄島の攻略に大部隊を投入したアメリカ軍が、数では圧倒的に劣る日本軍の要塞からのゲリラ戦に、予想外の苦戦を強いられる。
あの映画でも、アメリカ版(=「父親たちの星条旗」)では日本軍の姿をあえてベールに包むことによって、アメリカ側の底知れない恐怖を演出していました。
今回の「旅順攻略戦」は、あの映画にヒントを得たのでしょうか。





第1回旅順総攻撃


…そして、旅順攻略を開始する陸軍。
今までベールに包まれていた旅順要塞の攻撃力が、ここで明かされるんですよね。

ここで初めて、ロシア人の姿が画面に入ってくる。
彼らが必死になって戦うのは、当然なんですよ。
旅順は、遼東半島の小指の先っぽ。
援軍や補給も望めず、いわば「守り抜くか、しからずんば死か」の2択しかない。


旅順攻撃は、維新後初めて日本が「近代」というものの恐ろしさを知らされた、最初の体験であったかも知れない。
それを知ることを、日本人は、血で贖った。



この言葉は、この当時の日本の置かれた状況を的確に表現していると思いますね。
上でも書いてように、今回は原作を読んでいないので分からないのですが、恐らくこの言葉は原作にもそのまま出てくるのでしょう。
「血で贖う(=血をもってその代償とする)」の言葉が、映像で見事に表現されていました。
どこでロケをしたのでしょうか。中国?とにかく、すごい迫力でした。




一方、満州方面軍。
後に大平原を舞台にした大規模な会戦が行われるのですが、その息吹はすぐそこまで迫っていました。

日本に残る秋山家の平和なヒトコマから一転して、緊迫した音楽とともに戦闘シーンに移る描写は、凄まじいものを感じました。
演出にかけては超一流なんですよね、このドラマ。
もはや映画の域に達しています。





深い。世界は複雑だなぁ。


高橋是清がぽつりと漏らした言葉。
このドラマが目指そうとしているもの、描こうとしているものを象徴した言葉のようにも思えます。

原作『坂の上の雲』は、今更言うまでもなく、司馬遼太郎の最高傑作のひとつです。
途中で読み止まってしまった自分が言えることではないかもしれませんが、それでもあえて言えば、この作品は、日本贔屓に描かれているきらいはあるものの、その当時の日本とロシア、日本と世界の力関係を的確に読み解き、この日露戦争が単なる日本VSロシアの2国間の局地戦でなく、世界が注視し、世界を動かした、いわば「世界大戦の前哨戦」であることを明示する内容となっています。
(以前に、僕のブログ内で「坂雲」解説番外編~第0次世界大戦の衝撃~として取り上げたことにもつながります)

そういった深遠な内容を、ドラマ内で表現するのか、しないのか。
正直、この3年がかりのドラマが最初に放映された当初は、僕はそこまでの深い内容を期待してはいませんでしたし、そもそも、日露戦争についてのそういった事実すら知りませんでした。

しかし、このドラマはそこに挑戦してゆくんですよね。
昨年の第2部で、そういった残像が見え始め、そしてこの第3部では、その全体像がいよいよ現れようとしているように思えます。
日露の会戦をアメリカとイギリスの両大衆紙が取り上げ、それが戦争に与える影響を、日露の戦場の合間にはめ込むことによって、その世界観を上手に表現している。
見る側は、満州周辺だけでなく、世界地図を頭に思い浮かべながら、このドラマを見るようになってゆくのです。

このドラマ、海外で放映されてもきっと高い評価を受けます。確信できます。






…そして、旅順攻略へ。
乃木希典が、そして最後に、最終的に、203高地への攻撃目標変更に至るまでの過程。
今回は、その背景が丁寧に描かれていたと思います。

乃木は英雄か、無能の軍人か。
記事の最初に、その疑問を投げかけました。
しかし結局は、それは問題ではなく、歴史の激動期に必死に生きた、ひとりの日本人である。
彼と、彼を取り巻く人々の必死に生きた足跡が、確かにそこにある。
それを感じました。
そして、次回につながる、美しいエンディングであったと思います。




それと、もうひとつ。当たり前のことですが。

架空の物語ではないんですよね。
たかだか100年前に、僕らのそう遠くない祖先が体験したことなんですよね。
そう思いながら見ると、より親近感が増すと思います。

次回、203高地。



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「坂雲」第6話解説~義和団事件~


義和団事件



日露戦争への大きな引き金となった「義和団事件」を取り上げたと思います。
清朝最後の排外運動でであり、結果論で言うと、この事件がきっかけで清は完全に崩壊し、滅亡に追いやられるのです。
この事件を抜きにして、『坂の上の雲』は語れません。


まだ見ていない方は、臥薪嘗胆の記事を先に見ておくことをオススメします。

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(1)事件までの道のり


もともと中国の歴史は、漢民族と周辺の異民族の争いでもありました。
殷・周・秦・漢…とつづく中国の歴代王朝を覚えた記憶がある方も多いのではないかと思うのですが、現代の中華民国(台湾)や中華人民共和国(中国)の前の王朝がこの清王朝です。
もともとは満州に根を張る異民族である女真族のヌルハチが満州一帯に建国した国で、やがて中国全土の統一に成功するのです。


時あたかも帝国主義の幕開け。
この王朝は中国史上初めて、本格的な欧米列強の侵略を受けることになります。



イギリス国旗 イギリス

フランス国旗 フランス

ロシア国旗 ロシア



この3国により、清の領土は徐々に侵食されてゆきます。
イギリスはアヘン戦争により香港を獲得、主要港を貿易の拠点として開港させます。
フランスも、イギリスと組んでアロー戦争を起こし、中国進出をうかがいます。
ロシアはそのどさくさに紛れ、沿海州を獲得し、東アジア進出の拠点として軍港ウラジオストクを建設します。


しかし、列強はまだ恐れていました。

眠れる獅子


広大な国土と膨大な人口、そこから生まれる巨大な経済規模。
そしてその巨大な国家を周辺国も含め統治し続けたという歴代王朝の揺るがない歴史。
列強はこの大規模市場に進出して莫大な利益をあげるため、自国に有利な通商条約を結んできましたが、本格的に植民地化に乗り出すことはしませんでした。
本気を出した清の反撃を恐れたからです。
それだけヨーロッパ国家にとってこの東洋の巨大帝国は未知なままで、ミステリアスに富んでいた。


この当時、清の力を正確に評価することができたのは、ある意味、古くから中国を見てきた、隣国の日本だけだったかも知れません。

そして起こったのが、



日清戦争での旅順戦闘



開戦のわずか半年あまりのち、事実上、日本は清を破ります。


そのニュースは瞬く間に世界中を駆けめぐり、列強を驚かせます。
彼らが驚いたのは、日本の強さよりむしろ、清の弱さや脆さでした。
大勢の陸軍兵士と強力な海軍力を持ちながら、組織の命令系統がバラバラで、個々の力が分散し、自滅していった清国軍。
もはや清の内部崩壊が始まっていることを列強は見抜くのです。




こうなれば早いもの。
死肉をむさぼるハイエナのように、日本も加わり、彼らは、清の領土を次々と植民地化します。


清の植民地化(国名入り)


中国(CHINE)と書かれたパイが、列強により分割されている風刺画です。
実際には、下の図のような領土分割が行われました。
(正確には、この図は清王朝滅亡直前の植民地支配を表しています)


列強の中国進出2500


イギリスは長江流域を押さえ、フランスはその南部を掠め取る。
ロシアは遼東半島から満州への鉄道の施設権を得て、支配を強めてゆきます。
それにドイツが加わり、山東半島を支配する。
日本は日清戦争の対価として、台湾の日本初の植民地化に成功します。


清は手足をすべてもぎ取られ、心臓(北京)と胴体(その周辺)を残すのみになってしまいます。




(2)事件勃発


欧米列強による清への侵略。
それにともない、キリスト教など欧米文化が流入し、民衆の不満は徐々に高まってゆきます。

1899年末。
やがて、ドイツの支配下にあった山東省を中心に、宗教的色彩の濃い秘密結社「義和団」が民衆の不満を吸い上げ、ついに民衆による大規模な暴動へと発展します。


義和団事件3


彼らは外国人はもちろん、同じ清人でもキリスト教信者には暴行を加え、舶来物を扱う商店、鉄道、電線にいたるまでを攻撃、破壊しながら、勢力を拡大し、北進してゆきます。
ついに北京まで到達、北京と天津周辺は義和団によって溢れ返るような状態になるのです。
その数およそ20万。
北京の各国領事館は、濁流に呑み込まれる寸前でした。


義和団の進路


彼らは、

扶清滅洋

「清を扶〔たす〕け洋を滅すべし」
つまり、外国勢力を排斥し、清を復興させよ、と旗をかかげ、その勢いは留まるところを知りません。
この頃には、無差別な略奪などを行い、もはや完全に暴徒化していました。


この乱を利用して、列強の勢力を清から駆逐しようと目論んだ人物がいました。
「扶清滅洋」という義和団のスローガンをたくみに利用したのです。


西太后(蒼穹の昴)300

西太后


清朝末期の最後の実力者です。
列強に「宣戦布告」し、植民地化を進める各国との全面対決の姿勢を打ち出すのです。
この判断の愚かさを、彼女はのちに思い知ることになります。



暴徒化した義和団はドイツ公使、日本公使館員を殺害、北京の領事館を包囲。

1900年5月。
この危機に、八ヵ国からなる列強各国の連合軍が結成されます。
最も多かったのは日本の兵士で、ヨーロッパ各国は清に最も近い日本に鎮圧の舵取りを任せたのです。
この時、秋山好古も兵站任務として参戦しています。
彼らは天津を攻略し、いよいよ北京に向かいます。

一方の、北京領事館。
日本軍の柴五郎中佐が実質的な連合軍司令官となり、わずかな手勢ながら、60日間にもおよぶ籠城戦を成功させます。のちに彼は、イギリスはじめ各国から勲章を授与され、その功績を讃えられました。

そして8月14日、ついに連合軍は北京を解放します。
義和団はやがて清朝にも見放され、各地で散り散りになったのちに連合軍により各個撃破され、自然消滅してゆきます。


北京入場後は連合軍による略奪、暴行、強姦、殺傷…と、「かれらがやった無差別殺戮と掠奪のすさまじさは、近代史上、類を絶している」と、司馬遼太郎さんも『坂の上の雲』で述べています。
列強との条約改正という難問を抱えていた日本は唯一、略奪などを行わなかったことはドラマでも紹介されていました。




(3)事件その後


清朝は、国家としての形態を失い、事実上、内部崩壊します。
列強は植民地化をなおも進めてゆきます。
ロシアは満州から撤兵せず、完全に支配下におきます。
そして、朝鮮半島をめぐり日本と対立し、日露戦争へと発展してゆくのです。


清王朝が完全に滅亡したのは、10年後の1912年のことでした。




(主な参考資料)
『坂の上の雲』歴史紀行 (JTBのMOOK)
日露戦争史 - 20世紀最初の大国間戦争 (中公新書)
NHK高校講座・日本史「日露戦争」


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